楠田丘先生の特別講義

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楠田丘先生といえば社労士で知らない人はいないくらいの大先生。ご高齢のため最近は講演を控えていらっしゃったのですが、私の所属する日本人事総研のセミナーでお話しいただけるとあって昨日上京しました。
テーマは2つ、「2012年賃金交渉の展望」と「人材社会学の提唱」です。前半は賃金決定の理論を踏まえて今年の春闘を予想するもの、後半は昨年11月に発行された先生の著書「人材社会学」の概説でした。
賃金決定は、生産性を上限とし、生計費を下限として行われますが、今年は生産性より生計費の方が高い数字になってしまう特殊状況です。このような場合には労使の「譲歩均衡点」をはさんだ「譲歩均衡領域」で決定されることになります。今日本にとって必要なのは内需の拡大ですから、均衡点より高い「積極的領域」の中で決まるのが望ましい、というのが先生のご意見でした。
後半は、市場経済学偏重ではなく人材社会学の整備充実が求められるというものです。「人材の高度な育成」と「人材を基準とした経済(W)、社会(L)のバランスの取れた人間性にあふれた安定的成長」こそが人材政策のあるべき姿であると、先生は60年間考えてこられました。戦後GHQに提出するも却下された人材社会学の理念を、いまこそ提唱したい。そしてワークライフアンバランスの解決の一つとして、人材の育成(能力主義)と活用(実力主義・加点主義)を推し進めたい、という熱いメッセージでした。
ちなみに「人材」はヒューマンリソース、「人財」はヒューマンキャピタルと訳され、育成的観点では「材」でなければならぬとおっしゃいました。なんとなく使っていたことを恥ずかしく思いました。
今月90歳を迎えられる先生によれば、知力は100歳まで、体力は90歳まで、気力は150歳まで持つそうです。私にもまだまだ先がたくさんありそうで、元気が出ます。休憩時間に「写真を撮ってもいいですか」とお尋ねしたら、ぜひ並んで撮ろうとおっしゃいました。「人材社会学」にも、手が震えてうまく書けないけどととおっしゃりながらサインをしてくださいました。多くの受講生が写真やサインを求めていました。
また、講義前にホワイトボードの文字の大きさのチェック、講義中に予定時刻のチェックをされるなど、講師としての基本的な姿勢をいつまでもお持ちなのにも感動しました。昔のビデオで見たのと同じきりっとした話し方で、声もよく通ります。「目も見えなくなってきたし、手も震えるようになってしまったし、歩くのも不自由になってしまった」とおっしゃるとおりのご様子なのですが、お声だけ聞いていたらきっとわからないに違いありません。

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