生命保険の転換

先日の保険相談で、久しぶりに「お宝保険」を見た。「お宝保険」とは、平成の初め頃の予定利率5.5%?6%のときの終身保険である。お宝であるためには終身保険部分が厚くなければならないが、厚ければ厚いほどお宝である。
※予定利率=保険会社が保険料計算の基礎として使う運用利率。高いほど保険料が安い。現在は1%台。
※終身保険=死亡時に保険金がもらえる保険。死亡時に必ずもらえる(人間は必ず死ぬ)のであるから、貯蓄性の高い商品であるといえる。
※厚い=ここでは、保険金額が大きい。
ご相談は、例によって「見直しを勧められている」というものであった。保険会社の持ってきた資料を見ると、ひところあんなにたたかれた「転換」という文字が堂々と入っている。「転換のおすすめ」なのである。
転換とは、現在の契約を下取りして、新たな契約を買うことで、配当の権利はひきつがれるが、その他は新契約と変わらない。現在の契約の解約金相当額を、新たな契約の頭金として入れることである。
保険会社が転換契約を盛んに勧めた平成6?10年頃は、平成のはじめのお宝保険が世にごろごろしていたが、保険会社の転換奨励策でかなりの契約が転換されてしまった。だからこそ、それを免れたのが「お宝」となりえたわけである。
転換がすすんだ背景は、厳しさを増す運用に対し保険会社が予定利率を引き下げたかったからに他ならない。「保険料は1000円アップ、保障は1000万円アップ」という魔法のような話法で転換が進んだ。それを可能にしたのは、定期保険特約における更新型の登場だ。平成の初め頃の契約は「平準型」といって、たとえば契約時25歳から満期時60歳まで保険料の変わらないタイプである。いっぽう更新型は、たとえば契約時25歳から35歳まで、更新時35歳から45歳まで、45歳から55歳まで、55歳から満期時60歳まで、というように10年刻みで保険料が上がっていくようにして、若いころの保険料が安くなるように設定したものである。どちらが得かは判断に任せるが、とりあえず当初10年だけを見れば保険料はぐっと安くなる。しかし終身部分の予定利率は下がるから、終身の保険金を同じにしては保険料が上がってしまう。そこで終身部分を下げた分、定期部分を増やして、帳尻を合わせる手法も横行した。
※定期保険=ある一定期間(通常10年とか15年)間の死亡保障を行う保険。その期間内に死亡もしくは高度障害になれば死亡保険金(もしくは高度障害保険金)が支払われるが、支払事由がなければ満期時に解約金もなくなる。
さらに保険会社が開発したのが入院特約の更新型である。定期保険特約の更新型が登場したときにも、入院については80歳満期であった。しかし、こちらも当初保険料を安く見せる更新型が登場。かくして「保険料は1000円アップ、保障は1000万円アップ」という魔法が可能になったのである。
転換がすべていけないというわけではない。どうしても保険料負担は増やせないが保障を大きくしたいという向きもあるだろう。しかし、更新時に保険料が上がるという説明を聞き漏らした(あるいは保険会社の営業が説明していなかった)人も多かった。そういう苦情が相次ぎ、新聞紙上をにぎわし、「転換」という言葉が用心されるようになったのである。
「転換」を簡単に見破られない保険、それがLAの発明であった。この説明は他に譲るが、素人には大変わかりにくい。もしかしたら売っている営業員すら理解していないのではないかと思ったこともあるくらいである。
今回の相談者も、お宝保険をLAにしませんかという提案を受けていた。入院保障の増額と、保険料免除をエサに。わかりにくいのは当然である。ただし、この話にはオチがあって、契約者が転換を渋った途端、昔よく見た更新型への転換プランが提示された。開いた口がふさがらなくなってしまった。

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