逓増定期保険

 最近の逓増定期保険(注)は返戻率がものすごい。全額損金に計上でき、なおかつ解約時の返戻率が90%にもなる。会社の帳簿から経費として落としたお金が、後になって1割は減るがほとんどまるまる返って来るというわけである。魔法のような商品だが、さまざまな小技を使って返戻率を高めているのである。
 この商品は十数年前から存在している。当初は全額損金で返戻率は7割くらい。それでもよく売れていた。が、国税の通達が出て、損金算入できる保険料は特別の場合を除いて2分の1から4分の1になってしまった。
 数年前、逓増率を一定率ではなく可変にした商品が発売され、全額損金でありながら返戻率が7割を超える商品に改良された。こういう商品では、返戻率の高さが商品選びのポイントとなる。保険会社の競争が激しくなり、昨年ついに9割の返戻率を可能にした商品が発売された。1社が出せば、後は嫌でも追随である。しかし結果は見えている。再び国税の通達が出るのを早めただけだ。
 私はこういう状況ではとても逓増を勧めるつもりにならないよと、たまたま来た保険会社の人に話した。ついでに言うとガン保険を従業員全員にかけるのも(これも全額損金で返戻率7,8割)勧められない。保険の手数料が高いからこういう保険をどんどん勧める代理店もあるが、真っ当な商売のような気がしない。
 保険会社の営業は意外にも同意見だった。「僕たちが言うのも変ですが」。
(注)事業保険で節税商品として使われることが多い。たまに個人で入っている人もあるが、よほどマニアックな営業に勧められ、かつ本人もマニアックな人間にちがいないと思う。

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