退職後も確定拠出年金を続けたい

 今日は、1年間担当した東職安の「生活関連情報相談」の最終日。この窓口はまだまだ認知度が低くて利用者は少なめだった。最後の相談者は先週の続きとして予約してくれていたSさん。予約は1年間でこの人だけだったから、貴重なお客さんと言ってよい。
 Sさんの相談は、当初は失業中の年金加入についてだった。20代、30代のほとんどがそうであるように、彼も年金の知識はほとんどなかった。「公的年金は2階建て」ということすら知らなかった。
 私はまず、公的年金の負担と給付について説明した。基礎年金は加入年数(実際は月数)で金額が決まること、厚生年金は加入年数と給与水準で年金額が決まることを説明した。その上で、企業年金について尋ねた。彼は上場企業に勤務しており、DB(確定給付企業年金)の清算金の計算書を持っていた。DC(確定拠出年金)はと尋ねると、そういえばあったが、今日は何も持ち合わせていないということだった。それはまずい、すでに大勢の中途退職者のDC資産がそうなってしまったように、彼のDC資産も国民年金連合会に強制移管になってしまうと余分な手数料が発生する。不安に思ったのか、彼は再就職のためのセミナーに出る予定を切りつめて予約してくれた。セミナーよりもDCの方が大切ということで。
 今日、約束の時間にSさんは現れた。DCの移管方法について書いた冊子を持って。会社が退職者用に作ったものらしい。それを元に説明したのだが、その途中にもう一度公的年金と企業年金のしくみについて話した。「やっとわかりました。退職金は、年金の一部なんですね。僕はいままで別物だと思ってた。」
 そう、退職金は、賃金の後払いと会社が考えるか否かは別として、多分日本的雇用慣行の終身雇用の考えで行けば、定年後も会社が生活の面倒を見てあげるよということの現れなのだ。老後資金の援助という点では、DCはほかの制度にない優れた特徴がある。それは、60歳になるまで途中引き出しができないという点である。この点は普通はDCのデメリットとして言われるが、私はメリットだと思う。それは、公的年金だけでは今後絶対に老後資金が不足するという前提に基づいている。強制貯蓄は、よく言えば会社の親心なのである。
 私の考えが伝わったのか、SさんはできればDCに拠出を続けたいと言ってくれた。半年以内にDCのある転職先が見つかることを祈る。
 

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