自動車保険業界のコンプライアンスはまだまだか

 こんな話を知人の損保代理店から聞いた。顧客のAさんが交通事故に遭った。状況は、こうだ。Aさんが片側1車線の道を走行中、対向車線に進行方向と逆向きに駐車していた車が急発進し、Aさんの車の進行を妨げる形で衝突したというものだ。ぶつけた相手(Bとする)は、代理店と相談したらしき後、現場で、全額自分で負担して直すからと言って連絡先を告げ、その場を立ち去ったという。
 
 翌朝Aさんは私の知人である代理店(Sさんとする)に連絡してきた。Sさんは警察へ事故報告するように指示した。ところがBが出頭に応じない。そればかりか、B側の代理店であるTは、「警察になんか行くな。せっかく全部こちらで負担すると言っているのに」とすごんだそうである。
 事故を起こしたら人身であれ物損であれ、警察に届けるのが基本である。その場の口約束は後の紛争の元である。保険金支払いでも事故証明が前提であるし、道路交通法にもはっきりと義務づけられている。Tは、自損事故で片づけようとしていたに違いない。Aは大衆車、Bは高級車であって、B車の修理費を水増し請求してA車の修理費を捻出するのはたやすいように思われる。修理工場もぐるなのである。
 かつては、このような輩が大勢いたかもしれない。違法な処理や脅しで保険契約を維持する損保代理店。それを頼る、自己中心的な契約者たち。損害査定の精査化、コンプライアンスの徹底などで、こういう代理店は生き残りが厳しくなっているはずだ。が、現実には根強く存在するのだろうか。
 さらに驚いたのは保険会社の対応である。Aさんのところへ電話してきて告げたことは、「なぜBの言うとおりにしなかったのですか」ということだったらしい。保険会社がこうでは、代理店もきれいにならない。願わくば、これが担当者レベルだけの見解であって、会社との間で認識のギャップ(まもなくクビ)の存在があらんことを祈る。
 

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